大変光栄な事に、今年もIWC酒チャレンジへ代表審査員(パネルチェア)として参加させていただきました。2008年より日本酒の審査に加わらせていただいておりますが、今年IWC10周年を記念して兵庫県で行われた今年の審査は、本当に素晴らしい経験となりました。
IWCに日本酒カテゴリーが設立されたのは2007年の事で、当時は313種類のエントリーがあったそうです。エントリー数は毎年伸び、今年は1282ものエントリーとなり、57名の日本酒スペシャリストが14カ国より兵庫へ集いました。
兵庫県は日本酒生産量第1位の県で、酒米の王様山田錦の故郷でもあります。
2016年は山田錦生誕80周年記念でもあり、5日間に渡る素晴らしいIWC祝賀審査会を開く、もう一つの重要な所以となりました。
この特別な日本酒の旅は2016年5月15日新神戸駅より始まりました。
5月15日 SAKE Symposium in Kobe
IWC入りをする前に、まずジェトロ様主催の神戸サケシンポジウムへ。このシンポジウムは今現在の国際日本酒市場とこれからの日本酒販売、消費拡大の為の課題への理解を深める事を目的とした会合で、 マスターオブワインのサム ハロップ氏、同じくマスターオブワイン大橋健一氏、日本ソムリエ協会会長田崎真也氏のプレゼンテーションと平出敏江氏、マスターオブワインアントニー モス氏、国税庁宇都宮仁氏など日本酒界のVIPがパネルとして参加した討論を通して、重要な理解を深める事が出来ました。
15日夕方は西宮神社へ。参道には地元の方々が歓迎に訪れて下さり、本殿前で審査の無事を祈る美しく厳かな祈祷式が行われました。
その後には中々見ることのできないアップビートな津野山神楽を拝見し、祝賀ムードが高まる中、兵庫県主催のウェルカムレセプションデイナーへ。
ウェルカムパーテイー会場の西宮神宮会館では、井戸敏三兵庫県知事と今村岳司西宮市長より暖かい歓迎スピーチを頂戴し、盛大な鏡開き、古式四條流包丁式、酒造り唄を拝見しながら、兵庫県産食材をふんだんに使用したデイナーをいただきました。兵庫県庁様の素晴らしい“おもてなし”に溢れた夜を過ごさせていただきました。
5月16日 Sake Tasting Round 1
そしていよいよ日本酒審査第1日目。
兵庫県は白鶴酒造様で全ての審査は行われました。白鶴酒造様は伝統を守りながら、酒造りの革新に挑む、伝統建築の白鶴酒造資料館と近代的なビルが併設された素晴らしい酒蔵です。また白鶴錦を生み出されたことでも有名です。
審査初日はどの日本酒がメダルに値するかを決定する大変重要な日です。
真剣な審査が午前10時から午後4時30分まで行われ、各パネル普通、本醸造、純米、純米吟醸、吟醸、純米大吟醸、大吟醸の9項目、全約100種類の日本酒を審査いたします。
各パネル、審査員は代表審査員を含めて4-5名で審査が行われます。初日のパネルはフランスのゴルテイエ、北海道在住カナダ人のカリン、そしてサロンドサリューの伊東寿彦オーナーソムリエ様と。日本酒論議と意見交換は本当に勉強になります。
長い審査の後には、宮水と協会一号酵母発見、元祖正宗の蔵であられる櫻正宗の山邑太左衛門様の御歓迎を受け、櫻正宗博物館で夕食と余興を楽しませていただきました。
5月17日 Sake Tasting Round 2
そして審査も二日目。第二審査は第一審査を通った日本酒がどのメダルに値するのかを決定します。ゴールド、シルバーとブロンズ、また第一審査を通らなかった何本かも最高審査員の判断で戻されているので、新たにコメンデッドや除外が出ることもあります。
もしもメダルに該当する場合は、第一審査では必要なかったテーステイングノートを提出しなければならず、第一審査とは違うメンバーで代表審査員と書記を含めた審査員4−5名で行われます。
第一審査とは違い、テーステイングノート提出もあり、より詳しい審査が行われ、意見交換も書く審査員の背景がよりはっきり反映されます。その分学ぶことも多く、毎回大変貴重な経験です。今回のパネルには国税庁鑑定企画官の宇都宮先生もいらっしゃり、本当に多くを学ばせていただきました。
夕べには神戸湾のクルーズに。皆で爽やかな潮風と綺麗な夕日で、疲れも癒されました。デイナーでは全て地元の食材使用のメニューに地酒を合わせた素晴らしいものでした。
5月18日 Trophy Sake Tasting
審査最終日は最高審査員と代表審査員のみのトロフィー酒審査です。トロフィー審査では、ゴールドメダル該当酒の中からトロフィー該当酒を選出します。代表審査員が3グループに分けられ、振り分けられた各日本酒カテゴリーを審査いたします。
IWCには4名の最高審査員である、マスターオブワイン サム ハロップ氏、マスターオブワイン 大橋健一氏、アカデミーデユバン 楠田拓也氏、サイモン ホフストラ氏がいらっしゃいます。この4名がパネルの第一、第二、そしてトロフィー審査を殆ど全てもう一度試飲して確かめます。大変な集中力を要す作業です。
最高審査員4名の重労働によって、最高の審査結果が約束されます。
最終審査の後は、ノーベル賞デイナーにも供された日本酒、福寿の神戸酒心館での全国蔵元様との懇親会。全国から同志の蔵元様が参加され、IWCジャッジ、VIPと交流。足湯や芸者遊びなど、日本特有の文化を交えた素晴らしい交流の夕べとなりました。
5月19日 田植え
そして、待ちに待った酒米の王様、山田錦の田植え体験当日がやってきました。
ワインにおいて、テロワールがとても大切なように、山田錦が育つ土壌、空気、そして水に触れるのは日本酒造りを理解するために、とても貴重な経験です。
今回は特に世界中からワインの専門家も含めた審査員が来日している為、より素晴らしい経験となりました。田植えの後には山田錦に関するマスタークラスも開かれました。この時のお米は来年日本酒となり、参加者全員に贈られるそうです。
午後には伊丹市へ。ここでもまた素晴らしい交流がなされていました。
5月20日IWC トレード日本酒試飲会、メダル発表、ガラランチ
特別な旅となったIWC兵庫酒チャレンジ2016も最終日を迎え、生田神社会館で歴代のチャンピオン日本酒が集うトレード向け試飲会がメダル受賞酒発表とともに行われました。その後には盛大にガラランチレセプションが開催され、IWC酒兵庫2016の締めくくりのスピーチ、アワード発表、授与などが行われました。山形の出羽桜酒造様が
IWC Sake Brewery of the Decade を受賞、IWCの設立、運営に貢献したとのことで、市島酒造の市島様、浦霞の佐浦社長、蓬莱泉の関谷社長、UK酒サムライ代表の吉武理恵様、コーポサチの平出敏江様、そして入江啓介様が功労感謝賞を受賞されました。
もちろん日本酒トロフィーアワード2016も発表され、以下の日本酒が受賞されました。
蓬莱 天才杜氏の入魂酒
南部美人 本醸造
出羽桜 出羽の里
御慶事 純米吟醸
天の戸 純米大吟醸 35
出羽桜 桜花 吟醸
陸奥八仙 大吟醸
古酒 永久の輝き 1983
スパークリング “John”
各賞を受賞された皆様に心からお祝い申し上げます。
IWC酒兵庫2016を通して、私が得た経験は本当に貴重なものとなりました。IWCというワイン品評会を通して、兵庫県という地域を良く見つめることができ、日本酒を通して多くの事を学びながら、交流の輪が広がってゆくというのは、一見信じ難く、ものすごく素晴らしいことです。この様な経験をさせていただいた事に心から感謝をし、IWC酒兵庫開催に御尽力された井戸敏三兵庫県知事を始めとする兵庫県の皆様、IWCのクリス アシュトンさんをはじめ、その他全ての関係者の方々へお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。これからのIWCのいよいよの飛躍をお祈りしております。